お客さまに満足していただける金型を作ることが第一優先。そのためには、お客さまの要望に加えて、耐久性が向上する型構造や成形サイクルが短くメンテナンスしやすい型構造などを提案することも必要だ。金型の構造や設計時のポイントなどについて、メンバーが集まって様々なアイディアを出し合い、かかる日数や納期によって担当などを決めていく。
いったん仕事の進め方が決まれば、後は担当者の責任のもとに一つ一つの作業が行われていく。お客さまとの打合せや工数設定、加工手順の検討、新人からベテランまで一人1台与えられたCADによる図面作成、工作機械を効率よく動かすためのNCプログラム作成など、その仕事の幅は広く、そして深い。そんな大変な仕事でも、自分が設計した商品が店頭で発売されたり、TVのCMに出てきたときには何とも言えない満足感が湧き起こってくる。
金型を製作するためにはさまざまな工作機械が使われる。放電加工、マシニングセンターをはじめとする最新工作機械はデータ化された設計図、つまりプログラムを入力することにより1日24時間無人でフル稼働させることも可能だ。データの分析の仕方、プログラムの仕方により作業効率が大きく違ってくる。精度の高い製品を仕上げるのはもちろんだが、同時にいかに効率的に作業を行うか、ということも担当者の技量と工夫にかかってくる。
よりよいモノを造るためのオペレーティングを追求することは、また同時に“人”の持つ可能性を最大に引き出そうとすることにもつながるのだ。金型製造で工作機械を担当することは、他の製造業で工作機械を担当することと大きく違う点がある。それは、同じ工作機械を担当しても、隣の人と違う図面で、違う加工を行うという点だ。しかも、基本的には全く同じ加工は後にも先にもない。つまり、自分で図面を読み、加工手順を考え、NC工作機械にデータを入力し、と自分で考え加工していくという方法だ。勿論最初の頃はマンツーマンで先輩社員が指導してくれる。機械加工に慣れ、覚えてくるにつれ、自分で判断していく範囲がどんどん広がっていく。自己裁量の広がりが他の製造業と違う点と考えて良いだろう。
お客さまの要望する製品を金型にする際、多数個取り(1つの金型で一度に複数の製品を作る)にするかどうかといった生産性の面や耐久性、それに伴う金型の形状、コスト面など、さまざまな見地からお客さまとの間で入念な打ち合わせが行われる。そのお客さまの要望を的確に把握し、社内の各セクションに伝えることが営業の重要な仕事のひとつだ。お客さまとの打合せでは、技術的な相談から成形サイクルやメンテナンス性などの生産効率についても話が及ぶ。詳細な技術打合せには担当設計者が同席する場合もあるが、金型の総合力とお客さまの生産性にも配慮できる経営的な視点も求められる職務と言える。
産業のあらゆる場面で生産性の向上が求められ、競争が厳しい社会環境の中、こうした相手の立場に立った姿勢で仕事に取組むことは、ますます大切になってくる。